十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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(参りましたねぇ…) 彼の頭の中には電車の時刻表が掲載されていた。 次の列車はまもなく到着する予定。だがそれを逃した場合、次の列車は約二時間後であり、それが終電になってしまう。 それは夜以降、この列車を使う人間が激減するからと言うのもあるが、線路が他に存在するからである。 白麗町を貫通するこの路線。だが山の向こうには、白麗町の山々を避けて違う町へ向かう路線が多々存在する。 この路線の終点も次の駅ではあるが、ほとんど人気のない山々の町だ。 故に白麗町を経由する路線は廃れているのだ。 通る電車の本数も限りがある。 もちろん山を越えて抜ける道もあるが、曲がりくねった長い道路を上り下りしなくてはならない。 京介はそれをすべて把握していた。だから逆に次に来る列車の重要性もわかりきっている。 町人達から滲み出る悪意が目に見えてわかった今、もしその列車に乗れなかったら、地獄に丸裸で取り残されるようなものだと言う事も察知したのだ。
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