十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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駅のホームに列車が止まる。空気音と共に一斉に片側の扉が開いた。 「さっきは電車はなかった。だから僕たちは殺さずとも良かったかもしれません。逆に今なら、彼らは決死に僕らを引き留めるでしょう。そう、たとえ殺してしまっても…」 五十メートル程の距離はあるが、殺気が目に見えるかのようにそこにあることがわかった。 まるで妖しいオーラを纏うが如く。 「じゃあどうすんだよ!」 「………」 京介の思考でも、今正しい判断が出来なくなっていた。 「京介…」 京介の考えは間違いじゃない。 列車に乗らなくても殺される、列車に乗ろうとしても殺される。 苦悩する京介を見て、杏子もその表情に不安を浮かばせた。 ピィーーー… 笛の音。すぐに列車の扉の閉まる音。 「引き返そう…」 列車は無情に音を上げ動き出す。 「くっ…」 動き出した列車が次の駅へ向かってゆく。
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