十四章 夕刻、欠けてゆく夢

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彼らは去ってゆく列車を見つめているしかなかった。 「行っちまった…」 カーンカーンカーンカーン… 警鐘が空に鳴り響く。 ―――「電車が…」 僕たちは去ってゆく列車の姿を見送った。 カーンカーンカーンカーン… 「警鐘!」 けたたましく鳴り響いた警鐘。あの時と同じだ。 「急いで!始まるわ!」 太陽は西の空に完全に沈み、町は闇に包まれた。 空には丸い満月。 だけどそれは黄金色に輝いてはいない。 まるで血塗られた月。 それは赤く紅く染まっていたのだ。 「赤月…あれが…」 ドン!ドン!ドン! 聞こえてきた打楽器の音。言うまでもなく和太鼓の音だ。 おそらくは白麗ドームから流れているのだろう。 「走って!」 僕は一美さんの後を追う。足音は太鼓の音に紛れて聞こえないはずだ。 その瞬間僕の目に飛び込んできたのは一つの人影だった。
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