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彼らは去ってゆく列車を見つめているしかなかった。
「行っちまった…」
カーンカーンカーンカーン…
警鐘が空に鳴り響く。
―――「電車が…」
僕たちは去ってゆく列車の姿を見送った。
カーンカーンカーンカーン…
「警鐘!」
けたたましく鳴り響いた警鐘。あの時と同じだ。
「急いで!始まるわ!」
太陽は西の空に完全に沈み、町は闇に包まれた。
空には丸い満月。
だけどそれは黄金色に輝いてはいない。
まるで血塗られた月。
それは赤く紅く染まっていたのだ。
「赤月…あれが…」
ドン!ドン!ドン!
聞こえてきた打楽器の音。言うまでもなく和太鼓の音だ。
おそらくは白麗ドームから流れているのだろう。
「走って!」
僕は一美さんの後を追う。足音は太鼓の音に紛れて聞こえないはずだ。
その瞬間僕の目に飛び込んできたのは一つの人影だった。
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