―魔封師転生―

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その日の源助はいつもとは様子が違った。苛立っているような、苦しんでいるような、今まで見たことがない姿に蝶吉は戸惑った。 「師匠、どうかしたのかい?今日は何か変だよ。」 「蝶吉。ぬしはまだ病み上がりじゃ。今日は他出ならぬぞ。」 「あぁ。もう平気なんだけ…」 「ならぬ‼‼‼」 普段穏やかな源助のあまりの剣幕に蝶吉は目を白黒させながら、それでも神妙に家事に勤しんだ。 日が西に姿を隠す、誰そ彼刻のこと。 ふと、蝶吉が師匠の部屋の前を通ると、何時の間に上がり込んだのであろう、品の良い着物に身を包んだ老婆が師匠と何やら話し込んでいた。蝶吉は黙礼すると障子をすっと閉めた。 何とはなしに振り返った蝶吉は、障子に映る二人の姿に愕然とした。 老婆の影にはいつ被ったのか大きな笠があり、杖らしきものをついている。源助の影は、何やら頭巾のようなものを身につけ、常は行李ほど小ぢんまりした体が数倍の大きさになっているのである。 「中にお入り。」 金縛りにあったように動けずにいる蝶吉に、障子の影は微塵も動かず声をかけた。
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