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おそるおそる障子をあけた蝶吉は瞠目した。
部屋の中には異形のモノの姿が二つゆらめいていた。「ぬしは親の思い出があるか?」
さっきまで師匠であったと思われるモノが言った。
声も出せずに首を横に振る蝶吉に老婆姿の異形がやさしく声をかけた。
「傀儡の、まあ待ちゃれ。そこにお座り。」
訳もわからず呆然と座り込む蝶吉に師匠だったモノは語りかけた。
「今まで話さずに悪かったのう。わしは傀儡入道という妖じゃ。これなるおババは白粉婆。蝶吉、胸をはだけよ。」
まるで、操り人形のように言われるままに着物をはだけた蝶吉の胸の痣に、白粉婆が手を押し当てた。
刹那、暮れ泥む部屋に金色の光が溢れ、胸の痣が黄金に輝いた。
「おぉ!鬼十字が輝いておる。ぬしの役目は?」
「…ま……ふう…じ。」
「名は?」
「…………。」
「わしが話そう。じきに思い出すじゃろう。」
やおら傀儡入道と名乗るモノが語り始めた。その内容とは次のようなものであった。
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