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「おぉ!頭領」
「お目覚めなさいましたな。やれうれしや」
モノたちが歓喜の声をあげた。
幼な子の面影を残していた蝶吉の顔は一変し、虹色の瞳は鋭く光り、皮肉な笑みが口元に浮かんだ。
「傀儡も婆も老けたな」
皮肉な口ぶりは元服間もない男の声ではなかった。
「頭領。お久しぶりにございます」
「今は徳川家はどうした?また違うものが治めているのか?」
「いえいえ。未だ徳川の治世にござります」
入道がにやにやしながら答えた。
「ほほう。では今度は大した年月は経っておらぬか?」
「二百年あまりかと」
酒の用意に立つ婆を横目に入道が答えた。
「しぶといな。徳川は」
遠くを見る彼の頭には、平安、鎌倉、室町、江戸初期と転生を繰り返した時代が、光景がまざまざと浮かんだ。
「して、他の二人は?」
「追って、参上するかと」
酒を注ぎながら婆が答えた。
「ふむ。しかし、妖魔は絶えぬな」
「はい。人が心の闇に鬼を棲まわせているかぎりは」
「いかに封印しても湧きだすか。」
「仕方がござりませぬ。」婆がため息交じりに答えた。
「まあいい。ところで我はどこにいたのだ?」
「浅草観音堂に」
「ふた親は?」
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