1話(義行side)

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ジリジリジリ…… 時を告げる聞き慣れない目覚まし時計の音で目が覚めた。 「えっうわぁー」 目覚めて現れたのは俺、中川 義行(なかがわ よしゆき)が昔、住んでいた実家の部屋だった。 何年も愛用していたラジカセ、液晶ではないテレビ、たくさんの漫画本、意味のない世界地図が張ってあった。 (あれ??) 焦った。身動き出来ない程、焦った。そして「早く起きなさい!!!」母親の怒鳴り声を聞いて、なぜか…安心した。 「うるさいなー。起きてるよ」 まるで子供だな。いや、子供になったのか。 自問自答して母親の待つ茶の間に向かった。 茶の間に向かい、まず新聞で日にちの確認をした。2007年8月3日金曜日。平日。 今更だが俺はタイムスリップしたらしい事を再確認した。 「ご飯食べないの?」 それどころじゃない。 俺には、ここでやらなければいけない事がある。 朝食には手をつけず高校の制服に着替える。 俺は彼女『(倉持 愛里(くらもち あいり)』に、いち早く会いたかった。 そのために時を超えてきたのだから。 気持ちは急上昇し、まだ学校が始まるまで1時間以上あるのに愛里の笑顔を頭に浮かべ駆け出していた。 今でも愛里の笑顔を忘れた事はない。
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