01.たまごやき

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―死にたいなあ‥ 私の思考を死に近づける張本人が、今まさにとなりで寝息をたてている。 ―私が死んだら、あんたは泣くかなあ。 ‥‥ 「おはよ」 朝食の準備をしていたら、いつのまにか起きていたようだ。 「おはよう」 いつも、小林は起きると一直線に冷蔵庫へ向かう。 冷蔵庫に入っていた缶コーヒーを飲みながら、小林が作りたての卵焼きをつつき始める。 今日はイタリアンドレッシングを入れたのだ、 私も小林もドレッシングを入れた卵焼きは好き。 ―気付くかな‥ 私はあからさまに小林を見つめる。 何かが違う、と気づかせたいのだ。 「何?今日誕生日?」 「ちがう」 「うーん、今夜エッチとか」 「‥帰ってこないくせに」 「わかった、実家帰りたいんでしょ! そんなン手紙置いてってくれればいいから、 ゆっくりしてきなよ」 朝食を済ませた小林が洗面所へ向かうとき、私は小さな声で、「たまごやき」とつぶやく。 大丈夫大丈夫、いつものこと。 泣いてはいけない、こんなことで。 午前9時、ドアの閉まる音は、小林がバイトと称した浮気相手のモトへ行く合図。 多分、今日も帰ってこないだろう。
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