Armor

3/7
前へ
/38ページ
次へ
満月の夜はいつも一人で夜空を眺める。 生きていく中で必要な重い鎧は、服と一緒に脱ぎ捨てた…。 誰も寄せ付けようとしない無意識の雰囲気は、きっと私の精神の弱さが原因なんだと思う…。 満月はただ輝き、何を言っても傷付かない…。 傷付く事よりも、傷付ける事の方が私は何倍も怖いよ…。 何れ程泣いても月はバカにしない。 ただ暗闇を優しい光で綺麗な世界にするだけ…。 「星に願いを懸けるトキ、誰だって心を込めて望むなら、きっと願いは叶うでしょう…‥」 口ずさんだ曲は『星に願いを』。 小さい頃に習っていたピアノの練習曲の一つだった。 静かなメロディが夜空と同じで今でも大好きな曲。 「流れ星は己を削りながら輝く。なのに人間は命を削る程に醜くなるんだな…」 振り向くと上半身裸の男が立っていた。 私の大切な人…。 「そうだね。愛なんて言葉も美しいようで汚いもん」 「だから未だに俺はお前の恋人にもなれない」 そう少し拗ねたように、責めるように貴方は言葉を紡いだ…。 「倖、私はもう誰のものにもならないって何度も言ってるじゃない」 「耳にタコが出来るくらいには聞いたさ。なら何なんだ?俺とお前の関係は…」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加