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満月の夜はいつも一人で夜空を眺める。
生きていく中で必要な重い鎧は、服と一緒に脱ぎ捨てた…。
誰も寄せ付けようとしない無意識の雰囲気は、きっと私の精神の弱さが原因なんだと思う…。
満月はただ輝き、何を言っても傷付かない…。
傷付く事よりも、傷付ける事の方が私は何倍も怖いよ…。
何れ程泣いても月はバカにしない。
ただ暗闇を優しい光で綺麗な世界にするだけ…。
「星に願いを懸けるトキ、誰だって心を込めて望むなら、きっと願いは叶うでしょう…‥」
口ずさんだ曲は『星に願いを』。
小さい頃に習っていたピアノの練習曲の一つだった。
静かなメロディが夜空と同じで今でも大好きな曲。
「流れ星は己を削りながら輝く。なのに人間は命を削る程に醜くなるんだな…」
振り向くと上半身裸の男が立っていた。
私の大切な人…。
「そうだね。愛なんて言葉も美しいようで汚いもん」
「だから未だに俺はお前の恋人にもなれない」
そう少し拗ねたように、責めるように貴方は言葉を紡いだ…。
「倖、私はもう誰のものにもならないって何度も言ってるじゃない」
「耳にタコが出来るくらいには聞いたさ。なら何なんだ?俺とお前の関係は…」
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