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暑い暑い夏の昼下がり。
目に止まった電光掲示板が37度と示していた。
少し高い私の体温と同じ体温を持った風。
私の身体中を流れる血液と同じ熱さなのに、どうして暑いと思うんだろう…?
私のちっぽけな頭では解りそうも無かった。
ふと、派手な色の看板の横からバタバタとあがく羽音が聞こえて来た…。
目を凝らせば仰向けになったシオカラトンボが羽を羽ばたかせ、あがいてる。
虫は苦手。
それでも飛べないならと羽根を掴み、飛べと空へ放り投げた。
ヒラヒラと太陽に焼かれた道路へ舞い戻る…。
嗚呼、死んでるのか。
やっとそれに気付いた。
シオカラトンボは死んでもまだ、道路を霞めるようにして流れる風と共に、羽根を羽ばたかせてる…。
『生きたい』と叫んでるように思えた。
ジリジリと焼けつく太陽。
露出した服を着ている少女たちの隙間から遅刻中の人間がやっと現れた。
「ゴメン夢姉!!」
「寝坊なんて林檎らしいわ。取りあえずチョコレートケーキね」
「ハイ、奢らせて頂きますであります!!!」
ビシッと敬礼した林檎と二人でクスクスと笑った…。
私たちが入ったのは小さな喫茶店。
「可愛い店ですねここ。静かだし雰囲気も良いし…」
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