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【永井 広軌】
【ナガイ コウキ】
年齢 18歳
職業 高校生
18:48
太陽が沈んでしまう頃には家に着くと思っていたが、辺りはすっかり暗くなっていた。
歯医者で抜歯した箇所を舌で撫でながら、舗装されていない道を歩く。
ふっ、と妙に生温い風が永井の頬をなでる。そして、道の脇に沿って、ガードレールよろしく生えている雑草を踊らせる。
永井にはその雑草の動きが何か気味の悪い生き物がうごめいているように見えた。
少し早足で歩を進めると、風も強さを増し何かの泣き声のような音を辺りに響かせ始める。
まるで、何かを知らせるように。
無心で歩き続けると、永井の視界には人家の明かりが映ってきた。
温かい、家庭の明かりは永井に安心感をもたらした。
家に着きガラス戸を勢いよく開ける。
「だだいまァ」
家の奥からは返事はない。
履いていたサンダルを脱ぎすて台所に向かった。
「ん、……誰もおらんの?」
冷蔵庫を開け、麦茶をコップに注ぎ飲み干す。
改めて辺りを見回すとまな板の上にはジャガ芋と、人参が切りかけのまま放置されていた。
ピンクのプラスチックのザルには白滝が入っている。
鍋をのぞくと、エンドウマメの皮みたいな野菜--多分キヌサヤとか言うやつだーー がお湯のなかに浮いていた。
「今日は肉じゃが……?」
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