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暗い廊下をゆっくりと歩きながら誰か無事な人と会うことを望んでいた。
自分以外の人はあの怪物に殺されたか、もうとっくに逃げたのだろうか?
それなら誰かが通報して、学校に警察が到着してもいいはずであるが、校舎には三河の足音が少し響くだけだった。
あの怪物を私は殺せるのだろうか?
右手に持ったクリスタルの灰皿を見つめ考える。
おもいっきり頭を殴れば……、死ぬのかな?
……いくら灰皿が重くても、アタシの力じゃムリだ…
そう考え何か強力な武器を探すことにした。
怪物より先に見つけなくてはならない。
……確か図書室の準備室に日本刀が展示されてたよね、…確かいわくつきの日本刀だったっけ?
譜代小中学校周辺では明治時代に大量虐殺があった。
犯人の青年は狂ったように日本刀を振り回して村人を次々に殺害して廻った。
凶器となった日本刀は本来、歴史的価値のあるものだったので事件のあとでまたこの地に戻ってきたのだ。
月あかりが差し込む廊下を怯えながら歩き、教室を覗いて人がいないかを確認しながら、なんとか図書室にたどり着いた。
「ふぅ」
引き戸を引く。
しかし、鍵が掛かっているのか開かない。
窓も同様だった。
……窓、割る?
音で怪物が追って来るかも知れないが、
ガシャッ
窓を灰皿で割り、内鍵を開けて窓から図書室に入った。
整然と本棚が並び、気持ち悪いくらいの静けさは恐ろしく感じる。
カウンターの後ろのドアを開け準備室に入る。
事務のファイルや、本の仕入伝票、図書委員のポスターなどが床に散乱している。
部屋の奥には不自然についたてが置いてある。
ついたての向こうには日本刀が展示されていた。
日本刀の由来などが展示プレーとに書いてあるが薄暗いせいで全く読めない。
唯一読めたのは銘で【逆身覇業】とあった。
「サカミハギ…?」
サカミハギを手にとると頭のもやが取れてスッキリした気分になった。
手にしっくりと馴染むこの刀であれば怪物を殺せる気がした。
「早く斬りたいなぁ……え?」
アタシ、何言ってんの?やだ、おかしくなったのかな?
「んふふ…」
薄暗い準備室で月明かりが三河の薄ら笑いを照らしていた。
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