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東の魔女《クレハ》と西の魔女《ハービス》
…しばらくして、少女の歌は止まった。それは、風の神が止めたのではない。少女自身が、気を失ってしまったのだった。それは、色々な事が一度に起こり、緊張の糸が切れてしまったからだろう…。大いなる木の根元に倒れこんだ。大いなる木は、少女を優しく包み込むように、少女を受け入れたのだった。風の神は、少女を抱えて森を去っていった…。
私は裏切りはしてはいけない
裏切りをするのではなく
最後まで信じよう
ずっと…ずっと…
裏切られるより
信じることを…
重い鎖を体に巻き付け
誓いをたてよう
最後まで信じると…
どんな仕打ちを受けたとしても
最後まで…
東の魔女は、償いを行うように歌った。とても悲しい遠い昔の真実の物語…。
悲しい過去の始まりは、少女が生まれる前から始まった…。東の魔女は、ベットに眠る少女のサラサラの髪を触り、頭を撫でながら昔を思い出す…。
「カーラ、待って…‼」カールがかった淡い水色の長い髪の思いっ切りギュッとしたら壊れてしまいそうな体の少女を東の魔女は今にも泣き出しそうな顔で見つめた。これは、東の魔女の幼少時の悲しい記憶なのだろう。
「もう、クレハ…😁大丈夫😣」
優しくそして無邪気に言うカーラは、東の魔女に手を差し伸べた。クレハはその手をとり、ギュッと離さないように握っていた。カーラは、時の神でもあるこの国の王の一人娘であった…。そして私は、東の魔女の一人娘…。位が違いすぎた。しかし、カーラはそんな事は関係なく、ただ明るく太陽のような存在だった。私は、夜の者だから…太陽と月…光と闇が交わる時の一時しか会うことまでも出来ないような感覚が、幾度もなく襲ってきた。
月と太陽は、出会うことはあっても隣に寄り添うことは決して出来ない…。泣き出しそうな現実が波のように襲ってくる中、それは確実に近づいていたのだった…。
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