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名も知らぬ母の面影
少女の顔に冷たく想いが詰まった涙が、ビー玉のように丸くキラキラしながら頬に落ち流れた…。それは、東の魔女の涙だった…。もし、その光景を目にした者は目を疑うだろう。あの、冷徹非道の魔女として恐れられる東の魔女が、半人半神の名も無い少女に涙を流すなどと…。だが、その光景は、東の魔女の美貌までも明らかにするほどの美しい涙だった。この神の住まいである土地は、涙に流した者の本当の姿を映し出す効力がある。だからこそ、東の魔女は、顔を隠し、涙もずっと流すことさえ忘れるぐらいに流さなかった…。ただ、最愛の友を失ってしまったから…。
「さぁ、行こうか…。」
少女の体は、浮き、ただぐったりとした少女の影だけが床に残っていた。少女こそ、母そのものの面影があった…。
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