彼女 第１話

*…高校教師…*

　それから、準備をしてクラスに行き、授業が始まった。
　木下の席を確認したが、まだ戻っていない。

　遅れていいとは言ったものの、本当に遅れてくるとは、思わなかった。

　普通に授業を始めて、しばらくすると。

「遅れてすみません」

　木下が教室に入ってきた。生徒はもちろん木下に注目した。

「席について」

　そんな木下をすぐに席に着かせ、俺は、何もなかったかのように、授業をすすめた。
　ちらっと顔を見たが、少しは良くなっていた。

――――そして次の日、約束をしていた桜井も、ちゃんと、学校に来ていて。それで俺は一件落着と胸をなでおろしていた。

　俺のせいで、不登校になったら困るもんなぁ。

　俺はそれから、平和に過ごした。

　そう、俺の中で、次第に何かが変わっていく事を、この時はまだ知らなかったから……。