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容赦なく照りつける太陽と
それを照り返すアスファルト
もう8月の終わりだというのに
その勢いは全く劣れを
知らないようで 僕を苦める
少しでも日差しから逃れたくて
少しでも暑さを避けたくて
僕は砂利道の脇に立っている
桜の木の下に入った
影というだけなのに
随分涼しく感じられる
まぁ憎い照り返しが
ないこともあるのだろうが
しかし それでも暑いことには
変わりないのは確かだった
そこで服の胸元を持って
パタパタとやっていると
静寂を破って 僕の耳に
蝉の叫びが飛び込んできた
あまりに突然鳴き出すから
不意を突かれて思わずビクリとならずにはいられない
そうやってその蝉は暫くの間
大音響で鳴いていたのだが
急に静かになってしまった
はて 蝉も夏バテかな?
そんなことを考えていると
何かがかさりと軽い音を立てて
僕の足元に落ちてきた
枯れ葉か?一瞬そう思った
でも違っていた
それは大きな熊蝉だったのだ
先程まで鳴いていたのはコイツだったのだろうか?
だとしたら最後の唄を
歌っていたのだろうか...?
もう少しちゃんと聞いてやれば良かったと今になって思った
遅かれ早かれ
蝉にも桜にも そして人にも
生きとし生けるもの全てに
いずれ終焉はやってくる
だとすれば
僕は有終の美を飾りたい
コイツのように最後の唄すら
聴いて貰えないなんて
冗談じゃない
そう、冗談じゃないんだ
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