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そうした潤の態度を見て、その女性はすっと奥の席に座りじっと潤を見つめていた。
その女性の視線に気付いた潤はある種の薄気味悪さを感じた。
「何で俺のこと見てるんだ。全く理解出来ない。とりあえず、こういう場合はどうすればいいんだろうか……」
恋愛はともかく、仕事以外で女性と会話をしたことなどほとんどなかった潤は、どうすればいいのかわからず、いつの間にか先程の薄気味悪さが徐々に焦りへと変わり、なかなか読書に集中できなくなっていた。
「まさか、あの女性は俺に気があるのでは……。いや、ただ見ているだけなのかもしれない。しかし、だとすればどうすればいいんだ……。俺が読んだ本にこんなシチュエーションはのっていなかったぞ。」
潤という人間の中に数人の潤という人格が入り交じり、葛藤を続けてた。
そして、潤の焦りはかつてない程高まっていた。会社では冷静沈着で上司からも信頼感のある潤であったが、今日ばかりはそうはいかなかった。
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