僕がページをめくる度

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   潤はその女性のとった行動が理解出来ず一瞬冷凍庫で固まった氷のようになっていった。    そして、はっと我に返りおもむろに女性が置いていった手紙を開け読み始めた。     拝啓 坂下潤様    まず何故、私があなたの名前を知っているのか驚いたに違いないでしょうが、種を明かすとあなたが借りた本の最後のページに挟んである図書カードであなたの名前を調べたんです。    そして、実は私は半年前からあなたのことをこの図書館でずっと見ていました。    いつも、今日みたいにあなたとあなたの読んでいる本を交互に見ながら、あなたが借りた本の題名を覚えては、あなたの次に私があなたの借りた本を借りて読み、あなたのことを考えていました。    でも、半年間あなたは全く私に気付いてはくれませんでした。    それで、私は今日あなたが気付いてはくれなければ、親戚の方から紹介して頂いた男性とお見合いして、あなたを諦めることに決めたんです。    ただ、この手紙をあなたが読んでいるということは、今日もあなたは私に気付かなかったということなんでしょうね。    でも、この半年間あなたと同じ本を読み、そして同じ時間を過ごし、私はとても幸せでした。  本当にありがとうございます。 そして、さようなら。            遠山梨香
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