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「どうしようか……」
あっと言う間に悪夢の放課後になってしまっていた。現代文を爆睡していたためか、時間の経過にまったく実感がなかった。
(ホント、どうしたもんかな……)
ここは第一教務室前。校舎の一番端に位置するそこは放課後に限って頻繁に生徒が出入りするため、その入口の戸が常に全開になっている。
横を通り過ぎる生徒達が怪訝そうな目で見てくるのが少々痛いがどうにも一歩が踏み出せず、無視して帰ろうかと思ったがそうすると明日という日がもっと恐くなる。
行くも帰るも地獄、ハッキリ言うと逃げ場はないのだが。
「やっぱり帰ろう」
逃げる、そう決意して振り向いて帰ろうとしたときだった。不意に誰かが真後ろに立つ気配がして、そして何故か本能的な恐怖を感じる。
「……よく来たなぁ、比嘉」
嫌な予感っていうのはあるもんだとつくづく実感されられた。俺と同じくらいの身長が真後ろに立っている。
そしてドンッと肩に手が乗せられる。
「まぁ寄っていけや?」
「……はい」
情けないことに、授業の時とまったく同じ応答しか出来なかった。篠崎の前では何人たりともビビらずにいられないのだ。
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