1915人が本棚に入れています
本棚に追加
「佐波先生っ、なんでこんなトコに!?」
我ながら異様に焦っているのがわかり、自然と冷や汗が背中を伝う。再び煙草を口から離して手に持つ。
「あ~、ちょっと古いファイルの整理に」
「あ……あ、そうですか」
焦った。心臓に悪い。
「それより、さっきの電話……」
「えっ!?」
安堵したのはつかの間、また大量の冷や汗が流れて顔がひきつる。
「もしかして、彼氏さんですか?」
「へ?」
声が裏返る。見ると佐波先生は頬を若干赤らめて満面の笑み、なんだそれは。
「あれ? 違うんですか?」
彼女は私の反応を見て、どうやら勘違いを悟ったらしい。その愛らしい顔から笑みが消えた。
「違う違う、ただの知り合いだよ」
「あちゃー、そうですか」
妙に残念そうだ、どうやら興味津々だったらしい。若い内はそういうことばかりが気になるのだろうか、自分でそう考えながら自分が年寄りくさくなったように感じて空しくなる。三十路も越えたし、もう世にいうアラフォーである。
「あ、すいません」
今度は恥ずかしさから少し赤面して、佐波先生は段ボールを置くと小走りで逃げるように部屋から出ていった。ファイルの整理をするんじゃなかったのか?
最初のコメントを投稿しよう!