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「お前はいいよなぁ。中学の時の先輩がいるから1年なのにコートで打てるんだろ?」
俺は硬式テニス部に入った。理由の一つは単純で、その仲の良かった先輩が熱心に勧誘してきたからだ。
だからって別に1年生のくせにコートでテニスができるのは、それだけが理由なのではないのだが。
「玉拾いも体力作りもやってるって。ただ先輩が後輩想いだからさ、乱打の相手に誘ってくれてんだよ」
それに中学でソフトテニスをやっていたから、打つ感覚には慣れている。あと硬式は初めてってわけでもないし、先輩はそれを知った上で誘ってくれているのだ。
それに先輩は副主将なので簡単に逆らえるのは主将か顧問くらいだろう。まぁ、他の1年にはちょっと悪い気がするが。
「そうなのか。いいよな、うちのサッカー部は顧問が鬼のように恐いからなぁ」
そう言って獅郎は身震いする。
獅郎は入部したての頃に顧問を訪ね、経験者だからという理由で練習の参加を申し出たらしい。
だがしかし、それは過ぎたでしゃばりだった。獅郎は顔面を1発なぐられて「調子に乗るな!!」と怒鳴られたらしく、それ以来獅郎はその顧問に絶対服従となった。
というか、部員は皆その顧問に絶対服従なのだそうだ。
「良かったな」
「良かねぇよ、ホント」
自然と笑える、そんな俺を獅郎はうらめしそうにこちらをチラっと見ると、肩を落してため息を吐いた。
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