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(あ……)
しばらくして黒猫は、何の前触れもなく通り過ぎていった。なんでこんな不思議な感覚を覚えたのだろうか。
黒猫が目の前を通り過ぎた、これはかなり不吉なんじゃないだろうか。
「気分悪っ」
我が家はすぐそこだというのに、気分は晴れない。腹の底に何か重い物が沈み込んでいるような気分だ。そんな気分のまま自宅につく。
「ただいま……」
「あ、おかえり」
玄関を入ってすぐ思わぬ方向、階段から声がかかる。
「ん? あぁ」
返事など期待していなかったのだが。比嘉紅澄葉(ひが くずは)。
髪をポニーテールにまとめた中学ニ年の妹が制服のまま、階段から顔を出す。
「考査期間で部活ないんでしょ? 遅かったねぇ」
「まあ、ちょっとな」
ダイニングにあがり、ソファーにカバンを放り投げる。
公園で小学生とバスケしてたなんて言ったら、真面目な紅澄葉はきっと呆れるだろう。
「ぁぁ~、おかえり、兄貴」
「ん、いたのか」
テレビを点けながら振り返ると、制服をきたまま食卓に突っ伏している影が見える。比嘉澄輝(ひが とうき)。妹と同じく中学ニ年の弟。
ちなみに紅澄葉と澄輝は双子(二卵性双生児)だ。
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