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「紅澄葉、晩メシは?」
ソファーにドカッと座って後ろを返り見ながら問う。さっきまで無駄に運動していたのだ、腹が減って仕方がない。
「カレーが鍋に作って置いてあるよ。お母さん、また遅くなるみたい」
母、比嘉愛恵(ひが まなえ)は医療関係の仕事をしている。そのためか朝は早いし夜は遅い。その上、休みがかなり少ないので普段はほとんど家にいないのだ。
おそらく夜が遅くなるのを見越して朝にカレーを作り置きしていたのだろう。
「じゃあカレーを温めてくれないか?」
「それくらい自分でやって」
即答であっさり断られてしまった。どうやら動くのが面倒なのは同じらしい。
「可愛くないなぁ……」
「うっさい」
仕方なく立ち上がってキッチンに向かい、鍋の置いてある焜炉に火を点ける。蓋を開けると確かにそこには時間が経って固化したカレーが入っていた。
火を点けたままにして、弟と妹が座る食卓につく。
紅澄葉は英語の単語集をパラパラめくりながら澄輝の姿を見やっていて、澄輝は相変わらず数学の問題に苦戦しているようだ。
「そういえば涼にぃ、ニュース見た?」
コンロの火に目を向けていると、紅澄葉が話しかけてきた。
「行方不明の事か?」
「そうそれ、もう6人になるらしいよ」
6人か、もうあまり楽観視できない人数になってきた。
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