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「なんだか気味が悪い」
「ま、確かに……」
紅澄葉は不安そうにテレビ画面を見ている。澄輝もいつの間にか勉強を止め、シャーペンを手で弄んでいる。
「こういうのを“神隠し”って言うのかな?」
「“神隠し”か……」
ニュースでもそんな表現をしていた。犯人らしき人物の影すら見えない連続行方不明、たしかに"神隠し"のようではある。
人間の仕業ではなく、そうまるで神様の悪戯であるかのように。
「あのさ、涼にぃ」
紅澄葉がキッチンの方を指差している。
「カレーが……」
「ああっ!!」
慌てて鍋に近付くと鍋の中は溶岩のように煮え立ったいて、中身が少し外にあふれて鍋を伝い、火に接触して変な匂いを発している。
慌てて火を止めるが、既に手遅れな気がした。
「まさか、焦げ付いた?」
「……じゃ、若干な」
食卓に座る二人が明らかに不快そうな顔でこちらを見ている。
視線を落とすと煮立ったカレーの中にちらほらと黒い欠片が見て取れた。
(やっぱり、食わないと……いけないよな?)
少し焦げ臭い。これは激戦になりそうな、そんな匂いだった。
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