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「そんな、確かに……ベッドの上に……」
いない。急いで立ち上がり、部屋の中を見回すが、ベッドの上には何も無く、枕と薄い布団が置いてあるだけ、部屋の何処にもさっきの黒猫の姿は見当たらない。
そのまま茫然と立ち尽くしてしまう。
「ちょっと、大丈夫? 疲れてるんじゃない?」
「……あぁ」
「お風呂、空いたから次入れば?」
「……あぁ」
怪訝そうな目付きのまま、紅澄葉は向かい側の自室に入っていった。ゆっくりとまた自分の部屋に入り、ドアを閉める。
夢だったのだろうか。
(ホントに疲れてんのかな……?)
急に重い物が乗ったように、片方の肩が無意識に下がる。どうやら本当に疲れているらしい。と思った。
「人を呼ばないでほしい、色々と面倒なことになるからな」
耳元でさっきの黒猫の声がする。驚きで身体が動かない。
疲れて肩が下がったわけじゃなかった、本当に重い物が肩に乗っていたのだ。
「そんな、やっぱり幻じゃな……」
「おいおい、夢と現実の区別もつかないのか?」
黒猫は馬鹿にしたように言って、肩から飛び降りた。真紅の瞳がこちらを見据えている。
その途端に変な感覚に襲われる。
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