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「なんなんだ、お前?」
なんとか自分自身を落ち着かせ、ようやくしっかりと言葉を紡ぎ出す。
「そうか、まだ自己紹介をしてなかったな」
そう言って、誰が見てもわかるくらいハッキリと黒猫は笑った。
「オレの名はアグニ、“使い魔”だ」
「使い魔……?」
“使い魔”──普段は聞き慣れない言葉だ。
それが猫が喋ることに何か関係があるのだろうか。
「“使い魔”ってなんだ?」
「魔導師に従属する魔獣のことだ。お前から主の匂いがしたんでな、悪いが勝手に先回りさせてもらった」
「主……?」
なにやらファンタジーな単語が聞こえた気がするが、飼い主がいるか。
なんにしても、言葉を介する猫の飼い主だなんて正気な人間だとは思えない。
「お前、主に会わなかったか?」
「知らねぇよ……」
ここ最近とはいわずそんな変な人物に会った覚えはない。
「そうか。まぁいい、その内あちらから突き止めてくるだろう。それより……」
「ん?」
黒猫の表情が険しくなった気がする。空気が重くなった。
「一つ質問がある」
「なんだよ?」
「今、お前から複数の魔力波動を感じる。お前自身のものも合わせてな」
「まりょくはどう?」
意味がイマイチわからない。“はどう”とは“波動”のことだろうか。
だとすれば、物理の分野の話なのか?
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