崩壊への足音 ~ Collapse ~

12/34
前へ
/716ページ
次へ
  「なんなんだ、お前?」  なんとか自分自身を落ち着かせ、ようやくしっかりと言葉を紡ぎ出す。 「そうか、まだ自己紹介をしてなかったな」  そう言って、誰が見てもわかるくらいハッキリと黒猫は笑った。 「オレの名はアグニ、“使い魔”だ」 「使い魔……?」  “使い魔”──普段は聞き慣れない言葉だ。  それが猫が喋ることに何か関係があるのだろうか。 「“使い魔”ってなんだ?」 「魔導師に従属する魔獣のことだ。お前から主の匂いがしたんでな、悪いが勝手に先回りさせてもらった」 「主……?」  なにやらファンタジーな単語が聞こえた気がするが、飼い主がいるか。  なんにしても、言葉を介する猫の飼い主だなんて正気な人間だとは思えない。 「お前、主に会わなかったか?」 「知らねぇよ……」  ここ最近とはいわずそんな変な人物に会った覚えはない。 「そうか。まぁいい、その内あちらから突き止めてくるだろう。それより……」 「ん?」  黒猫の表情が険しくなった気がする。空気が重くなった。 「一つ質問がある」 「なんだよ?」 「今、お前から複数の魔力波動を感じる。お前自身のものも合わせてな」 「まりょくはどう?」  意味がイマイチわからない。“はどう”とは“波動”のことだろうか。  だとすれば、物理の分野の話なのか?  
/716ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1915人が本棚に入れています
本棚に追加