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「罠なの?」
「その可能性は否定できん。ここまで難解な式は長年生きて来たオレでも稀に見る。何が仕掛けて“ある”のか、或いは“無い”のか……まだわからん」
「そう……」
無理もない。奴等が行使したのは、歴史上の誰もが無事に成しえなかったとされる偉業であり、許されざる悪業。
「私は……何も出来そうにないね」
「当然のこと、これは最上級の禁術だぞ? 15年程度の知識量では手もつけられんさ」
「むうっ」
基本的にそいつは失礼な奴だが、今の少女はその解析能力に頼るしかなかった。悠長にしている時間は無い。
数十分程度の時間が流れた。
「ふぅ」
一段落ついたような吐息、どうやら結果が出たようだ。
「どうだった?」
「魔法陣には特に問題はないようだ。この魔法も問題無く発動するだろう」
「それなら、急ごう」
「待て」
静まり返った空間に響く静止の言葉。声のトーンを若干低くして、少年声が続ける。
「今更かもしれないが、一応訊いておく」
夕暮れは終わり、夜が始まる。外から射し込む光りは消え、室内はいっそう暗くなる。
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