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「この魔法は理論さえ完全ではない。つまり過去の偉大な魔導師達も扱えなかった魔法だ」
「…………」
「安全は補償できない。もし成功したとしても、戻って来れる補償もない」
「…………」
「さらに言えば、今更オレ達が向こう側に行ったとしても、事態は改善しないかもしれない」
「…………」
「それでも、行く覚悟はあるか?」
言われるまでもない、覚悟は出来ていた。誰かがやらなければならない。たとえ無駄な犠牲になるとしても、後に続く者達の道標くらいにはなるはずだから。
「行こう、私には世界を越えてやらなけばならない事がある!!」
その瞬間、床に描かれた図形や文字──魔法陣が淡い青色に輝き出す。そして数秒と経たぬ内に青い光が勢いを増して広がり、部屋中を照らす。本来は室内で風は無かったはずだが、まるで突風を受け続けているように長い金髪が激しくなびく。
「わかった、キリ。では行こうか……“向こう側の世界”へ」
その青い光がまるで爆発したかのように視界を真っ青に染め上げ、少女の意識は途切れた。
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