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「お前は文字通りの親バカになってまだ赤ん坊の娘に必死にパパと言わせようとする」
何となく想像してみる。俺はやりそうな気は余りしないが。
「そしてある日…娘が初めて喋った。パ…パと。お前は狂喜乱舞したのも束の間で、愛娘は続いて…パパ…フナムシぃ」
「う゛おぉぉお! 娘ぇ!」
「どうだ小僧! 俺の気持ちが分かったか!」
自分とフナムシを並べられる事がここまで恐ろしい事だったとは。
「娘ぇ!!」
「うるさい!」
バキッ!!
おじさんと俺は葵のピコハン乱舞を受けて地面に伏した。
「さすが…我が娘…ピコハンを凶器に変えるとは…」
「本当に似たもの親子よあんたら」
葵はわざとらしい大きなため息を吐いた。
「えーと…俺は何をしようとしたんだ?」
おじさんが頭を掻きながら周りをキョロキョロと見回す。どうやら記憶が混同しているらしい。
「そうだ! 小僧! 俺のことは…」
「パパりん」
「ふわぁぁぁあ゛!」
おじさんは再び絶叫しながら背中を掻きむしった。
「次の木曜日は何の日かわかる?」
話が一向に進まないのでおばさんが話を進める。
「………俺の両親の命日…そして十回忌」
「馬鹿やろう。その日は例年通り24時間耐久陣取り合戦だろが! …因みに敗者はもれなく腎臓を取られる」
「おじさんは一人でやっててください」
「小僧に言われんでもやるわ!」
やるのか。
「例年通り葵も渚も学校を休ませるわ」
「……はい」
「リト遊んで遊んで~」
ジロー退屈そうにただこねている。雰囲気ぶち壊しだ。
みんなから見れば背中を床にこすりつけながら踊ってるようにしか見えんがな。
「2人の結婚記念日にこんな事になるなんて…リトちゃんが直前に行くのを辞めた事がせめてもの救いだわ…」
おばさんは毎年決まってこの言葉を呟く。
「リト~? どうしたんだ~?」
膝の上にジローが登って来て喉を鳴らしながら甘えてきた。
うるさいな…ほっといてくれ。
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