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俺が7歳になってすぐの9月。
その日は突然やって来た。
9月なのにとても暑く、ひたすら暑く…。
太陽がギラギラとアスファルトを焦がしていた。
十周年の結婚記念日という事で、2人は夫婦水入らずの旅行に出掛ける事になり、俺は両親の親友である向日夫婦に預けられた。
「本当にいいのリト? お留守番で?」
「いいよ母さん。どうせ二人共ところ構わずいちゃつく気でしょ?」
俺は呆れたように皮肉を漏らす。仲が良いのは良いことに違いは無いのだが…。
「分かったわ…。じゃあリト? ちゃんと向日おばさんの言うこと聞くのよ?」
俺の頭を撫でながら母さんは嬉しそうに笑った。
「何度も言わなくたってわかってるよ母さん」
「リトちゃんは賢い子だから大丈夫よ」
おばさんも背後から近付くと俺の頭を撫でて笑った。今よりも更に若干若い。
「あんたが居るとうるさいから迷惑だわ」
葵が短いポニーテールを揺らしながらそっぽを向き憎まれ口を叩く。
相変わらず(?) 小さい。
「それじゃあ行ってくるな。達人。(おじさんの名前) リトをよろしくな」
「おう。旅行楽しんで来いよ」
父さんはそう言うと車を発進した。
これが永久の別れとなるとは…。
誰が予想出来ただろうか……?
「…鍵は出発しなかったか」
どこからともなく声が聞こえた。
猫だ。
白い猫がこっちを睨むように見ていた。
「クルセルト(歪みの鍵)の持ち主か…こんな少年だったとは…しかし早急に…手を…」
何を言ってるんだ?? 俺は猫を凝視。
すると猫は突然眩い光に包まれ消えた。
「…嘘!? ……おじちゃん! 今、猫が光って消えた!!」
「そうか。じゃあとりあえず家に上がれ」
聞けぃ!! 我が魂の叫び!!
おじさんに流され俺は仕方なく家の中に入っていったんだ。
何で止めなかったんだろう…?
まさかあんな事になるなんて…。
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