千夜から向日へ

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両親のお通夜及び葬式が向日家中心に行われた。 そして俺の名字は千夜離島から向日離島へと変わった。 親戚とも疎遠で、一人ぼっちになっちまった俺を両親の親友である向日夫婦が養子として引き取ってくれたのだ。 この夫婦には一生頭が上がらない。 感謝してもしきれないな…。 「ジロー?? この子じゃない??」 綺麗な透き通った声が聞こえる。 「ああ…確かめるまでもなくすぐに感じ取っちまったぜ」 「よぉ~!」 葬式が終わり両親の墓の前で佇んでいた俺の前に現れたのがジローとロビンだった。 そして現在に至る。 「ちょっ! ちょっともっと優しく洗ってくれよ!!」 俺は風呂場でジローをわしゃわしゃと豪快に洗う。 大体ロビンは綺麗なのにこいつは獣臭がするんだよ? 「うるせぇな! オイラはオトコだからしょうがないだろ!」 「あっ! オトコって言ってもさんずいの方で、漢な!!」 …うぜえ。 「よし! 完了!」 俺は泡だらけのジローを置き去りにしようと歩き出す。 「ふざけんなぁ~リト!! これじゃあ綺麗どころか泡の化身みたいになってんじゃねぇか!!」 「いいんじゃねえか? かっこいいじゃん」 「良くねぇ!! …くらえ!! 泡の抱擁!!」 ジローが泡だらけの姿で抱きついてくる。 「てめっ!! ふざけんな…」 ガチャ。 「あんた頭大丈夫?」 葵が風呂の扉を開けて、覗いて来た。 泡だらけで独り言を言い、猫と格闘している姿は確かに異常だな。 「リトの異常者~」 お前が言うな化け猫。 「ひどっ!! 化け猫じゃないやい~」 俺は泡の化身と化したジローを洗い流し部屋へ戻った。
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