千夜から向日へ

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「リト~? お買い物~?! オイラも行くじょ~」 外に出ようとした俺にジローが話しかけて来た。 「いいけど…くれぐれも二足歩行するなよ?」 「しないしない。したこともない」 嘘付け。 この間二本足で走っているとこ目撃されてごまかすの大変だったんだからな。 発情期で頭イカレて、軽くトリップしてるんですってごまかしたけど。 「気を付けるってば~」 「なに~? あんた買い物に行くの? じゃあ、あたしも行くわ」 葵が素早く駆けつけて来た。 「リト~行ってらっしゃーい」 ジローの裏切り者。 「あんまり近付かないでよ。ただでさえ一緒に暮らしてるってだけで変な噂が流れ出るんだから」 歩きながら葵が憎まれ口を叩く。 だったら来なきゃいいのにな? 顔はイケてるのにこのトゲトゲした性格どうにかならんかね? 「なによ! 人の顔じろじろ見ないでよ!!」 「見てねぇよ。チビひまわり」 ドガッ!! 何でだよ…。 何でこいつはピコハンを凶器に変換出来るんだ…? 「チビ言うな!!」 俺は地面に倒れ、葵は怒って膨れている。 「…助けて…痛いよぉ……」 どこからともなく悲痛で弱々しい声が聞こえた。 ……え!? 俺は立ち上がって声のした方へ走って行く。 「ちょっと!! リト?! どこ行くのよ!?」 葵もすぐ後ろを追い掛けて来る。 「付いて来んな!!」 何だろう…嫌な予感がする…。 「どうしたのよ!? ちょっと待ってよ!!」 だけど葵は走って付いてくるのをやめない。 そのままコンクリートブロックの塀があるT地路を曲がった。
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