猫の声

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「しくしくしく…」 泣き続けるレースの精と化したジローから手早くドレスを剥ぎ取る。 「…きゃあ!いきなりリトったらだ・い・た・ん☆」 その瞬間、俺の中で火山が噴火した。 「そんなに気に入ったなら体に縫い付けてくれるわ!!」 「ギャ~ちょっとリトさんてばっ! それ縫い針じゃん!! シャレになんないってぇ!!」 「何してんの?」 冷めた声にピタッと1人と1匹は停止する。 またもや葵が顔を覗かせていた。 右手には縫い針、左手には可愛いレースのドレスを持ってジローを追いかけてる姿は確かにまたもや異常だった。 「……アイス」 「あっ…? ああ…」 葵はアイスの袋を引ったくって一つ取り出し、残りを冷凍庫へしまった。 そしてそのまま二階へ上がり、 バタン! と自分の部屋に閉じこもった。 どうしようかなぁ……。 「なぁリト!! 見てくれ!! さっきテレビであってたダンスだ!!」 「チャラララ~」 ジローは軽快なステップを刻み。 くるくる回りながら、ヘンテコなダンスを見せてきた。 「なぁ!? リト!? このダンスやばくねぇ?!」 そうですね~。やばいっすね~。 やばすぎて頭の中身どころか頭ごと落っことしてきたんじゃありません?? 「ちょ!! あからさまに敬語になるくらい今のオイラウザかった!?」 いやぁ…お前自体がウザいの塊じゃん? 「ひどっ! オイラはただリトを元気付けようと…しくしく」 わざとらしいな。 俺はため息をついて自分の部屋へと引っ込んだ。
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