彼との思い出

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季節は春。 志望校に余裕と言って良い程の成績で合格し、何も不満の無い筈の状況で迎えた入学式。 満面の笑みで入っても良い私立K高校の校門を何故か溜息をついて、どこか悲しみを帯びた目で入る少女がいた。 『はぁ…圭吾がいない高校なんて…』 私、日々野沙都(ヒビノサト)は2年付き合った彼氏と別れた。高校が違う事なんて関係無いと思っていた矢先に別れ話をされてしまったのだ。 元々志望校も一緒で、成績も問題は無かった。しかし他の受験者の成績で、彼が落ちてしまったのだ。 彼の名前は吉岡圭吾(ヨシオカケイゴ)。出会ったのは中学1年の春。同じクラスで2回目の席替えで初めて喋った。 「あっ❗日々野隣?」 「うん。そ~みたいだね。1ヵ月よろしくね~★」 「うん。よろしく★」 圭吾は笑った。これが私達の最初の会話。 その後1ヵ月で、私達は共通の好きな物が多い事を知って、だんだん『友達』になっていった。 友達と映画を観に行き、出て来てから気付いた事もあったし、図書館に行くと、読もうとしていた本を読んでいるのを見付けた事もあった。 そんな風に喋ったり、偶然出かけた時に会ったりするうちに、『友達』から『好きな人』に変わっていった。と言うより、圭吾が『好きな人』だったと気付いた。
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