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「おかーさん!お腹空いたよう!」
「さっき食べたでしょう?我慢してちょうだい」
弟は、また駄々をこねている。ついさっきご飯を食べたばかりなのに。
まあ、それも粟や稗を炊いたものを少しと、菜っ葉のお吸物だけなんだけど。
あたしだってもうお腹がペコペコ。でも、叫んだり喚いたりしたところで、無い物は無い。 お母さんを困らせて、自分ももっとお腹が空くだけ。
「あや、ちょっとお遣い行ってきてちょうだい」
「はーい」
弟はまだ小さいから、お遣いは私の仕事。近所のお店で、雑穀を安く売ってもらう。
…天下太平って言ったって、農家はまだ貧乏なままじゃない。お米はおろか、麦も野菜もろくに手に入らない。
一番苦労してる人たちが、一番損をしている気がする。これでも昔よりは、ずいぶんましになったと、大人たちは言うのだけれど。
「やーだー!おかーさーん!おじさん離してよー!おかーさーん!」
「あ…」
子売り、だ…。可愛らしい男の子が、男の人に半ば引きずられるようにして歩いていく。
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