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「おかーさん!おにーちゃーん!おねーちゃーん!僕もうわがまま言わないから!いい子にするからー!」
泣き叫びながら、必死で手を伸ばしている。家族は、目を伏せたまま黙っている。
珍しいことじゃないんだけど、それでもやっぱり…見ていられない。
「ごめんね…ごめんね…」
苦しそうに呟くあの子の家族の声を振り払うようにして、あたしは急いでお店に向かった。
「ごめんくださーい」
お店に着くと、あたしは入り口から中に呼び掛ける。
すぐに中からこう兄ちゃんが出てきた。
「おう、おあや!今日もお遣いか」
「う、うん…」
こう兄ちゃん、本名は耕助。あたしよりみっつ年上で、このお店の長男。すごく優しくて、しっかりしてて、あたしの憧れの人。
「?どうした、なんか元気ないな?」
「そ、そうかな?」
「ああ。なんか暗い顔してる」
言葉にしなくても、こう兄ちゃんには何でもお見通しみたいだ。
「さっき、そこで子売り見ちゃってさ、やっぱ何度見ても慣れないわ…あははは」
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