―第一章 朔詠閉話― Ⅱ

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 勿論、人間の頭が処理できるスピードではない。  故にそれは人間に視れるモノではないのだろう。0と1に分解されたデータを脳へインターフェース無しにハッキングでそのまま流し込んだようなそんな無理矢理な感覚が今でも頭痛の種になっている。  未来は葉っぱの葉脈みたいなものだ。ありとあらゆる方向に枝分かれして無限の可能性を秘めている。  ―――ナント不安定。  少し手を加えれば、簡単に人の命さえも変える事が出来る。 「眼を凝らしなさい。……視えるんでしょう? 人の『生』が、『運命』が……」  そう。俺が視ているのは紛れも無い人の『生』そのものだ。  『運命』とは決められている。  風が当然に吹くように、水が当然に流れるように、火が当然に燃え盛るように、生きとし生ける全てのモノに例外無く存在する―――運命。  俺には、それを歪める力が在る。  未来が視える―――つまり、それは死の運命をも変えられる。  つまり、俺は人を生かす事も殺す事も決められる。 「だが、視えているだけだ。  俺にはその視える必然と必然の可能性が、何を意味しているかまでは解らない……」
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