―第一章 朔詠閉話― Ⅱ

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「薫が今、脳内に巡らせている想像どーりに改造してあげようか?」 「そりゃ、遠慮しときます」  左胸には直径15センチほどの大きな傷跡が痛々しく残っている。  まったく、人の意思やら尊厳やらを完璧に無視したオペだったことは見ただけで理解できる。  よっぽどのこのお方は俺に生き地獄を味合わせたいらしい。 「どうだった? 死の体験は」  やけに『ニヤニヤ』と嬉しそうな顔で聞いてくるな。  こっちは思い出したくもないというのに……。 「詰まらない……。その一言ですね……」 「そう」  はい、そこでいきなりつまらなそうな顔しない。 「一つ疑問いいですか?」 「どうぞ」 「俺は骸鬼によってこの眼を自由自在にコントロールしていた。  つまりは、骸鬼に全ての能力を任せていたことになる。  その骸鬼に破壊された今、この眼は骸鬼と共にジャンクになったはずじゃ?」 「その理由は薫自身の方が詳しいんじゃない?  君は骸鬼によってその眼を使っていたのではなく、骸鬼によってその眼を抑えていただけで。蛇口が壊れた今、それをせき止めるものが無くなったというだけのこと。  でも、おかしいのよね……。未来視は、過去視は、黒陽の専売特許なのに」
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