―第一章 朔詠閉話― Ⅱ

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「……?」  初めての経験で頭が理解できていない。歩こうとするのだが、足が前に踏み出さないのだ。  立とうと足に力を入れる度に『ガクン』と、足が沈む。  無理矢理、蘇らされたせいで脳内プラグがしっちゃかめっちゃかにでもなったのか。 「はい。もう少し眠っていてください」 「アンタは?」 「私はミア・パルム・デュナミスと言う者です。聖子様から話されていないのですか?」 「今、目覚めたばかりで何も話していないのよ」 「そうですか。それは仕方がありませんね」 「……全く、話が読めないんだが……?」 「彼女はこれから薫が不自由無く、動ける様になる為の専属の看護士とでも言おうかしら」 「確かにここは病院ですけど、俺は俺専用看護士と付けて貰う程、弱ってないです」 「なら、私が主治医としてミアの代わりに毎日来るけど?」 「遠慮しときます」  自分でも驚くほどキッパリ断言した。  確かにこの体は役に立たない。  今、気付いたのだが手を上げたり腕を動かしたりするので重労働だ。  髪は伸び放題で、美容院に行って直さないと日に当たる場所に出ることさえ適わない。  しかも、何故か寝巻きが甚平という始末。全く、俺は明治初期の散切り頭の侍か。
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