ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

4/14
655人が本棚に入れています
本棚に追加
/481ページ
「残念。私は宇宙人を捕獲する黒の組織のエージェント」 「ベリーならやりかねないわね」  さっ、と受け流す。まぁ、この子の本音を知ろうとする方が無駄だからだ。  私の性格はやるからには徹底的に、喩え敵が命乞いをしても地獄の果てまで追って行きコテンパンにないと私の気が済まない。  逆にベリーは柳の様に悉(ことごと)く全てを受け流す。  そもそも、自分から何かを求めるという表現が下手な子だ。  それに自分から動く事も余り無い。  私はベリーと初めて会った時、その姿が途轍もなく誰かに似ていた事を覚えている。  空を自由に動く雲をただずっと見ている。  それは自分では行動出来ないから、せめて誰かの動いている姿を見ていたい、と言うように。  頭を『ブン、ブン』、と振って考えを改める。  私のやるべき事は切り裂き殺人鬼の処断だ。  余計な事を考えている場合ではない。 「いつもの貴女らしくないわ……美羽。いつもなら敵の本拠地に乗り込んで鬼の首を一人で獲ってくるじゃない」
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!