ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

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 何も無い。何も無いはずなのに体は引き返せと警告をならす。  自分の鼓動が『ドクン、ドクン』と聞こえる。  息を殺し、自分と言う存在を出来る限り薄めて気配を消す。 「やるわね……。  魔法の学園に騎士団が乗り込んで来るなんて……私達が追っているのはよっぽどの大物らしいわ」 「数にして……6って所ね……」  ベリーの手の甲に氷の鋭い、三本の獣に似た純粋に敵を殺す爪が造られていく。  この戦いは殺らなければ、殺られる。  相手はプロの存外殺し、その上に私達の命を狙っていると言うのなら、それは―――全力で敵を殺さなければならない、何故なら迷った瞬間に死を迎えるから……  焔を手に宿す。  『轟々』と相手を葬り去ろうと咆哮を挙げる。 「その身……天使に抱かれて逝きなさい」  絶対零度。瞬間にして死の冷気が全てを抱く。 「全て薙ぎ払って差し上げます」  無限熱量。刹那にして死の熱気が全てを消す。
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