ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

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 ご立腹のようだ。  それも無理ない。彼女は俺を任されている訳だから、俺が逃げ出すと何かと問題なんだろう。 「ミア。俺は常に翼を羽ばたかせていないとダメな男なんだ」 「そうなんですか? 私には猫の皮を被ったライオンにしか見えませんがねぇ?」  キザな言葉で乗り切ろうと思ったがどうやら、俺にはキザな言葉は似合わないらしい。  それも当然か。言葉って言うのは一つ、一つに大切な意味が込められている。  だから言葉だって使われる人間を選ぶものだ。  俺にしてはファンシーな考えだったかな……  煙草を一本取り出し、口に運ぼうとすると目にも止まらぬ速さで取り上げられた。 「ダメじゃないですか! 薫さんはまだ未成年ですよ!」 「酒は15歳から煙草は18歳からなんで大丈夫です」 「何処の国の法律ですか! しかも、まだ薫さんは18歳じゃないです!」  ま、ミアの言っている事は正しい。  よっぽど俺の体を気遣ってくれているのか必死になってくれている。  だが、別に俺はそんな先の事を考えないで今を精一杯生きる呑気な男なので、無視して新しい煙草を取り出し口に咥え火を点けた。
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