ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

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「どうしても聞いてくれないようですね……。それならこっちも考えがあります」  ミアが『ゴソ、ゴソ』と何かを取り出す。  それを俺は煙草の煙を立ち上らせながら『ボー』、と見ている。 「私には薫さんを止められませんでした。その償いを私の命を持って……」  状況を冷静に分析してみよう。  ミアの手には果物ナイフが在る。  それを空中に持ち上げて、何の迷いも無く首に………ってオイ!!  俺は力の限り、果物ナイフを叩き落し、煙草を足で踏みつけ消す。  日本とは違うので、土で煙草の吸殻を隠したのは言うまでも無い。 「これでいいだろ……」 「はい!」  満面の笑みで『ニコニコ』と笑いながら元気に答えるが、俺にはその表情を喜ばしく思う精神状態は存在しなかった。 「それにしても薫さんと出会ってもう四日経つんですね」 「へぇ、もうそんなに……」 「はい。私は屋敷とこちらの方を行ったり来たりしているので本当に早く感じてます」 「屋敷……?」  コンビニで買っておいたジュースを飲みながら、些細な疑問を聞いてみる。
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