ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

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「言っていませんでしたか? 私は千堂美羽様という方にお仕えしているメイドですって?」  思わず、口に含んでいたジュースを噴水のように勢い良く噴出してしまった。 「大丈夫ですか? はい、ハンカチです」  吹き出してしまったジュースで汚れた口元をハンカチで拭く。 「そういう事は早く言って欲しいな……。ま、そんなことも言ってたような気もしないではないけど……」  まぁ、美羽を捜す手間が省けて良しとしよう。  何事も前向きに考えて行くのが謎解きのようで楽しい。  その点でこの眼は俺には必要ない物だ。この目はこの先何が待ち受けているか解ってしまう。  つまり、テスト前日にテストの内容が解ってしまったり、見知らぬ誰かが何処で転んでしまうのかが解るって言う事だ。  もっと深いモノを視るならば、誰が何処でどうして死ぬかさえ視える。  それがその人の『生』なのだ。  何処かで切れてしまう道……それを俺は視る事が出来る。  だけど、俺は正義の為にこの眼を使おうとは思わない。  その『生』を変えると言う事は少なからず、俺に責任が問われる。  それは当然の結果だ。
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