ー第一章 朔詠閉話― Ⅲ

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 本当はそこで終わる『生』に介入して先延ばしにしたと言うのなら、それは人間の成す業ではない。天使や悪魔の所業だ。  ま、もっとも悪魔の眼を持つ自分が言えた事ではないが。  それにこの眼を四六時中使っていたら、先に俺の方が狂いそうなのは否定できない。 「そうそう。頼んでいた物は手に入った?」 「はい。もうそれは特注品ですから」  アレが手に入ったのなら、俺は人間相手なら負ける事は無いだろう。  ……例外組を外しては。  だが、元より俺が戦うのは人間外のモノだ。  それは死神や存外達……その点で少し心配が残る。 「まぁ、なんとかなるか」 「はい?」 「こっちの話。……俺の勘で今夜…って所かな」  直感的に敵と見据える存在の行動を読む。  眼を使えば正確な情報を手に入れられるが、廃人になる気はさらさら無い。 「さて、夜まで美羽のお屋敷でくつろぐかな」  猫のように体を伸ばし体の骨を『ポキ、ポキ』鳴らす。  ジュースを飲み終わり空になったペットボトルを数メートル離れたゴミ箱に投げ入れる。 「良し、絶好調。ミア、案内してくれ」
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