絶対君を抱いてみせる!

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  「と、いうわけ」 「…何がというわけですか」 「だからー、今日は天気が良いから、屋上で昼飯を食おうと思ってー」 「だから、何で私がここに連れて来られなきゃなんないんですか」 今は昼休み。 そしてここは屋上。 屋上には、俺と渡辺さんの二人だけだった。 上機嫌な俺とは逆に、渡辺さんは頗る機嫌が悪そうに、眉をひそめる。 理由は、俺が無理矢理引っ張ってきたからだ。 「一緒にお昼食いたかったから」 「…もういいです」 渡辺さんは諦めたように溜め息をつき、座った。 俺がその隣に座ると、少し離れる。 …酷いなぁ。 「俺のこと、そんなに嫌い?」 「嫌いです」 「どうして?わかんないなー。こんなに格好良いのに!」 「そういう自意識過剰なところも、女性を性交渉の道具としか見ていないところも、全部」 「…それは…しょうがないよ。だってそれが俺なんだし」 きっと一生変わらない。 俺が俺である限り。 「それともさ、君が変えてくれるの?俺を」 渡辺さんは弁当を食べる手を止めてこっちを見た。 にこにこ笑う俺を見て、弁当と箸を床に置き、両手で俺の頬をバシッと挟んだ。 痛くはないけど、凄く驚く。  そして彼女は、顔を間近に近付けた。 キス、されると思ったけど、彼女は不適に笑うだけだった。 「変えて欲しいんですか?私に」 「んーどうだろう。変わった方が、楽しいのかなぁ?」 「さあ?」 「…渡辺さん、眼鏡外した方が可愛いよ。髪も下ろして、さ」 「私は変わりたくないんで」 「…キスしてもいい?」 「ありえません」 そう言って、渡辺さんは俺から手を離し、また弁当を食べ始めた。 酷いな。 つーか、またありえないって言われちゃったし。 頬が赤いのは、叩かれたせいなのだろうか。 心臓の鼓動も、少し早い気がした。 .
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