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「なぁ、春樹」
不意に啓太が、雑談に紛れて、真剣な顔つきで声を掛けてきた。
コイツが僕を名字でなく、『春樹』と呼ぶ時は、大抵重要な話だったりする。
「あの女は止めとけ」
へ?
「別に、本気で何とかしようとか、考えてないよ?」
何故か少し声が震えた。
顔も、軽く引きつっていたかもしれない。
啓太はそれに気づいたろうか?
「ならいいけど……。
あいつは……マジになっちゃ……いけないんだ……」
そう言ってうつむいたかと思ったら、
そのまま机におでこをつけ、眠ってしまった。
マジになっちゃいけない?
僕が?
彼女が?
どちらも有り得ない話だろう?
どういう意味なんだよ?!
サークルの仲間達は、眠ってしまった啓太に笑いながら、次回の練習日をダラダラと決め、解散した。
啓太は、どうやら啓太とアパートが近い佐藤が運ぶらしい。
全く世話がやける。
それでも仲良くしていられるのは、やはり啓太の人柄だろうか。
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