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定まらない眼差しを宙に泳がせ、彼女はいつもそこにいた。
大都会の片隅の、路地を幾つか曲がった行き止まりにある、キャパ50人も入れば窒息しそうな小さなハコ。
ステージだって、階段くらいの段差で、小さく狭いくせに、音響もしっかりしてるし、ミラーボールだって回ってやがる。
クレイジーな真っ赤な壁に、豊富なドリンクバー。
そう、ここは知る人ぞ知るライブハウス。
毎週末、そのハコの片隅で、彼女はいつも同じ場所に同じ格好で座っていた。
ちょこん
て、効果音がぴったりな感じで。
青いライダースを羽織り、赤いタータンチェックのミニスカートに、太ももと膝が破れた網タイツ。黒いブーツは鉄の踵だ。
髪はショッキングピンクに染められ、
見え隠れするピアスはゴールドに輝いていた。
こんな子、今時いないと思ってるだろう?
僕だって、最初は思ってた。
たとえいたとしても、普通は知り合いになんて、なりたくないと思うだろう?
僕だって、最初は思ってた。
いつから全ては回りだしたのだろうか?
赤や青や黄色の光を反射させながら。
多分、それは僕が彼女に出会った時から。
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