一章

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 彼女が部屋を去ったのち、ボクはしばらく彼女が出ていった方を見ていた。  するとコホンと咳払いの音が聞こえた。聞こえた方に目を向けると、白髪の老人が立っていた。 「あのう、すいません…ここはどこでしょうか?」 ボクはとりあえず疑問に思ったことを聞いてみた。正直、自分がどうしてここにいるのかわからなかった。 老人はボクの言葉を無視して、後ろの開いた襖の向こうに目配せした。すると部屋の中に2人の男女がはいってきて、ひざまずいた。 「ここにいる二人が貴殿の世話をしまする、伊十朗と雨女子(うめこ)にございます。」 「…はぁ…」 ボクは意味のわからない展開に呆然としてしまった。「陽ノ司伊十朗と申します。以後、お見知りおき願います。」 「瓶井戸雨女子と申しまする。身の回りのお世話をさせていただきます。」 二人はいい終えた後、そろって頭を下げた。
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