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「……ら、……って、おい!」
「ごぷぇあっ!」
僕の貴重な安眠の時間が、アキのフライングクロスチョップによって奪われた。
「んぁ……なんだよ」
「いつまで寝てるつもりだ」
「ん……少しだけだよ」
「お前の少しは4時間なのか?」
「あーそうそう、4時間……って、は?」
アキの4時間という言葉と、それを肯定した自分に、思わず耳を疑った。
「だから昼だと」
「ちょっと待て……お前に質問しよう。『何で』昼なんだ?」
「お前が寝てたからだろ」
「『何で』起こさなかった?」
「俺に何の義務があってだ?」
「親友だろ?」
「こんなときだけ友人面しないでくれ」
「貴様ぁっ!」
鼻で笑うアキに強めなガゼルパンチをかます。
それをひらりとかわし、アキは更に続ける。
「それに何か唸ってたしな。『あっ、クラン……そこ』とか」
その言葉に、女子メンバーの一角で美味しそうに弁当を食べていた死神が、顔を真っ赤にしてこっちを見てきた。
「いま……何と?」
彼女の言葉には、何処か殺気が籠っていた。
「んあ?だから……」
「言うな友よ」
その場の空気を咄嗟に読み、アキを制止する。
「え~」
「『え~』じゃねぇよ! 公共の面前でんなこと言うな!」
「そうです! それにさっきの言葉より実際は女々しかったです!」
…………
「……何言ってんのお前」
「はうあっ!つい口が!」
「なるほどな。俺らが知らんうちによろしくやってたと」
「そんなんじゃねぇよ!」「そんなんじゃ無いです!」
と、完全に同じタイミングでシャウトしてたりする。
『って、』
「何でハモるんだよ!」「何でかぶさるんですか!」
また。
『うるさいっ!』
またハモる。その後に、これまた同じタイミングで拳を固め、同じ要領で間合いを積め、同じモーションでお互いの顔にクロスカウンターが決まり、お互いに大の字になって倒れた。
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